橋は延命対策して使用する時代
橋梁やトンネル、標識類等の構造物点検を5年毎に行うよう法整備された後、その成果により様々な構造物に補修が必要な損傷が見つかりました。コンクリートや鉄の構造物は木製のものと異なり腐ったり朽ちたりしないため「永久構造物」と言われてきましたが、コンクリートでも鉄でも、適切なメンテナンス無しでは構造物は長持ちしません。そこで、利用者の安全、環境保全、景観性や経済性も考慮し、どのような方法で補修すべきかを検討していきます。
これは道路橋だけでなく、鉄道橋や水道橋なども同様です。
橋梁補修前・橋梁補修後
コンクリート製構造物の補修
コンクリートは年月とともに劣化します。鉄筋コンクリートの場合、表面から大気中の二酸化炭素が侵入し、セメント中の水酸化カルシウム等と反応を起こすことによりpHが低下します。(アルカリ性→中性になる)コンクリート中の鉄筋表面はpHが下がると腐食が進行します。また、自動車等の排気ガス、酸性雨等も同様の劣化の原因となります。この劣化を「中性化」といいます。
海岸線に近い橋梁には、海水の飛沫や潮風が当たります。また、積雪地の路面には融雪剤(塩化カルシウム等)が散布されます。これらによりコンクリート中に塩化物イオン(Cl-)が侵入すると、鉄筋の腐食が進行します。これは「塩害」です。
寒冷地では、コンクリート表面からしみ込んだ水分が凍結し膨張することにより、コンクリートが損傷します。鉄筋コンクリートだけでなく、鉄筋の入っていないコンクリートでも同様に劣化が進行します。この劣化は「凍害」です。
コンクリートの材料同士が化学反応を起こし、生成された成分が水分供給により膨張することで内部から破壊が進む「アルカリシリカ反応(ASR)」というものがあります。
年月の経過によるものではなく、コンクリートの乾燥収縮による微細なひび割れなど建設後すぐに発生する損傷もあります。
凍害とアルカリシリカ反応(ASR)
コンクリートの簡易強度試験・コンクリートはつり(鉄筋径計測)
鋼製構造物の補修
鉄製の橋は言うまでもなく錆が発生します。このため定期的に塗替え塗装が必要です。ところがただ表面に錆が出ているだけでなく、表面が何層にも剥がれて厚みが薄くなっているもの、更には穴が開いてしまっているものもあります。交通量が極端に多い橋、ダンプカー等の重い車が走る橋には亀裂が発生しているものもあります。このようなものをどのような方法で修理するか検討します。
修理の後には塗装を行います。塗装は何十年も前から何回か塗り重ねられており、錆が出ていないところも白っぽく変色していたり剥がれていたりしているため、悪いところは取り除いてから塗装します。ところが取り除く古い塗料には鉛やPCB等の有害物が含まれていることが多く、飛散・流出を防ぐ対策が必要であり、また廃棄方法も厳密に決められています。作業員が鉛中毒等にならないよう、安全対策も必要です。そこで、最適な塗料や作業方法の検討が必要となります。
錆の進行による孔食と板厚測定